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宣言通り、
すっかり季節外れの、
やっとできましたクリスマス小話つづきです。
この期に及んで、まだつづくんだな。懲りんな。
今更クリスマスの時のTOP絵を置くのであった。
仕方ない、しょうがない、ごめんなさい。

つづきからクリスマス小話Ⅱをお届けいたします。
かなりオリジナル色強いですが、
まぁそんなもんだと思って、
お暇なとき、目を通してやってください。






------------------------------―――――――――


 

 

乾いた空気に、広がる星空
見上げて吐き出す白く残る息が、
自分の未練にも見える。
出せども出せども、宙に漂う。
目に見えるもの、全てが胸の中を握り潰す。
苦しくても、切なくても、
全ては自分が蒔いた種なのだと―――

 

 

【ゆびきりなんて】

 

 

続く銀世界に、己の足跡を残しながら前へ進む。
しかし、降り続く雪がその軌跡を徐々に消していく。
生きるとは、虚しいものよ。
前に進むとは、実のないものよ。
そんな歌を歌う旅の詩人の声が耳にこびりつき、振り払い、
サクサクと鳴る己の足音に集中する。

未だ、岩肌。
そんなおれに降り積もる雪は、
溶けずに重さを増すだけ。
落としてみても、また重さを増す。
解けぬ悩みに――――途方に暮れる。

それでも―――
腰に括り付けた水筒にぶら下がる、
色褪せぬ蒼をみるたびに、
おれの中心に暖がつく。灯る炎はむしろ焦げるほど熱い。

「・・・っとに、未練がましいこって」

何度目かわからぬ自覚に、
何もない、雪のみの平野に、
重力を失ったかのように腰を落とした。

 

そしてあの温もりを思い出して泣きそうになる

 


あのゴブリン退治をした日の、
極限状態の―――――熱い夜。

忘れられるわけがなかった。
今までずっと抑え込んでいたものを、
本人を目の前にして大爆発させたのだから。
汗まみれの匂い、戦いによる埃と血の匂い、
昼間は感じなかった、甘い血の匂い――――
あぁ―――あの日か。
嗅覚も人より勝っているため、このくらいの変化には敏感だった。
彼女のこととなると、殊更。
その匂いを肺いっぱいにためたおれの目の前には、
視界いっぱいの、彼女の疲弊し、物言いたげな表情。


――――いや、抑える方が無理でしょ


何度そう思って自己嫌悪に陥ったか知れない。
彼女のたまたま極僅かに、出した弱さに付け込んで、
行為を続けても拒まなかった彼女を都合のいいように解釈して、
心の中では幾度も謝罪を繰り返しながら、
本能で唇を貪り続けた。
未だに水を飲むだけで思い出せる彼女の味、
とか思ってる己の変態加減に、卒倒しそうになる。


―――あれから、数年は会っていない。


会ってはいないが、文だけはたまに送る。
会いたいのに会えない、なんて綺麗事では全くなくて、
会せる顔が無いのに、繋がりは断ち切れない、ただそれだけ。
恋に溺れた男の、無様ななれの果てだ。

もう、駄目だった。
あいつじゃないと、駄目になっていた。
ここ数年で色んな女に出会い、
その中には、こんなおれに愛を説いてくれる者もいたが、
心は、ふらりとも揺れなかった。
それ所か、彼女への想いは募るばかり。

これはもう、認めるほかなかった。
骨の髄まで、彼女に惚れている、と。
これが俗にいう、骨抜きにされている、と。
そして己は意外と一途な性格なんだと、初めて知った。

それを自覚してからの、おれの行動は早かった。
是が非でも異界黙示録を見つけ出し、元の姿に、
人間に戻る、と。
おれはその悲願成就に、以前以上に執着するようになった。


アメリアと対等になるために、人間になる。
それが全てであると思っているわけではない。
恐らく、セイルーン(あそこん家)にとっちゃ、
おれが人間でも合成獣でも、さして問題はないんだと思う。
それでも、やはりそういったことを気にする王族は、いるだろう。
そんな頭の固い連中(人のことは言えんが)に、屈するつもりはないが、
アメリアが涙を流す危険性は、ゼロではない。
おれは、おれのことでアメリアが涙を流すのが、
どうしても耐えられないのだ。
その要素は、少ないに越したことはない。

だから、人間に戻ってから、あいつに気持ちを伝えたい。
その願いを成就させることを、一つのけじめとして。
これぐらいこなせなければ、
あいつを一生守っていけないような気がして。

気持ちを伝えた後も、
何年待ってもいい、あいつが振り向いてくれるなら、
何度だって気持ちを伝えよう。
何だってやってみよう。
ここまで、心が上向きになれたのも、
以前の旅の仲間――――リナやガウリイ、アメリアのお陰だ。

だからこそ、
一度決めた自分の信念は、諦めたくなかった。

そして現在、異界黙示録の存在の空振りに、
気落ちしている真っ最中。
根底にある陰険な部分が、また顔を出した所だった。

 


どんな惨めな男でも、腹は減る。

そんなときにちょうど、温かな湯気の出る店があれば、
ふらりと足が傾くのは、人の性であろう。
フードと顔を隠すマスクを深くし、
店にドアに、吸い寄せられた。

「「あ―――――!!!!」」
「・・・・っ」


店の全メニューなのではないか、という量の料理が並べられた、
店の中央の大テーブルに、それらはいた。

「ゼルガディスじゃんか!!久しぶり!!」
「あんたまだ生きてたのね~!?
 全然音沙汰ないから、心配してたのよ~??」
「おい!心配してるとか、嘘くさいなぁ~!」
「あはは!嘘だもーん!」

「・・・あれ、お客さんの知り合い?」
「すごいよ、あの二人。最初にすんごい量のお金置いてって、
 『これで拵えられる料理全部ちょうだい』って言ったきり、
 ずっと食べ続けてるんですよ・・・?」
「・・・何分、昔からそういう奴らでな・・・」

店員にも、まるで助けを求めるように聞かれ、
おれは思わずげっそりした表情を更に深くした。

 

「おーい!久しぶりなんだから、一緒に飯食おうぜ!ゼル!」
「・・・そう急かすな。」

まぁ何にせよ、この二人との再会は、
げっそりこそするが、実は和むものがある。
つまり、プラマイゼロ、だ。


「リナ、ガウリイ、久しいな。」
「「おう!」」

 

―――なにやら、雰囲気が違う?

 

「ガウリイ!やっぱり北国の料理はうまいわねー!!」
「全くだ!!」
「あー!そのムニエル!いただきー!!」
「うおーっ!!こっちのソテーはオレんだー!!」
「あにおー!!!??」

いや、会話の内容は、全く変わっていないんだが、
なんだか・・・雰囲気が・・・?

ここで、おれは持ち前の観察眼を駆使させた。
以前、一緒に旅をしていた時と、装備は大分変っているが、
そういうことではない。
そろいのブレスレットをしている、というのも既に観察済み。
見た目、としてはリナが大分大人っぽくなった、所ぐらいか?
大人っぽくといっても、要約年相応に見えるようになった、といった感じ。
そう、リナが落ち着いているのだ。
これか?違和感はこれなのか?
確かに、このリナが落ち着く、とか天変地異の前触れ、
ドラゴンはもちろん、魔族も跨いで通るのではないだろうか。

そしておれは、決定的な、アレを目にした。

「―――――っ!!!」
「ん?ゼル、どしたの?」
「おまっ・・・!!!お前らっ・・・!!!」
「どうしたんだよ?青くなったり紫になったり。」
「やかましい!!って、そうじゃない!!」
「あによ?」
「~~お前らっ・・・いつ結婚したんだ!?」
「「あぁ。」」


双方、お互いの薬指に光る銀のソレをちらと見た。

 

とりあえず、食事を一段落させた。
ほぼ強制的に一段落させた。
以下二人はぶーぶー文句を垂れていたが、強制的に終わらせた。
こんな大事な話を、戦争しながらさせるわけにはいかない。

「結婚して、もう半年くらいかぁ?」
「おい。」
「いや、だからとりあえず報告しながら旅してんのよ。
 まず、フィリアんとこ行ったし、
 ミルガズィアさんとことか、ルビアのとことか。」
「途中で魔族に襲われたり、路銀稼ぐために仕事しながらだからさ、
 これがなかなか知人を回るのが大変で!」
「あんたはいつか会えればいいって思ってたし。」
「おい。」
「だって、一番連絡取りづらいでしょあんたとか!!」

世話になった人たちには、文ではなく直接会って伝えたい。
せっかく旅をしているのだから、
直接会って、お互い幸せであることを見てほしい、とのこと。
そんな言葉がリナの口から出ると、
明日地球が滅亡するのではないかと、思わされる。

「ま、とにかくお前さんに会えて良かったよ、ゼルガディス。」
「あぁ。一生あんたらが夫婦だと知らずに過ごすところだったよ。」
「特に、あんたとアメリアには直接言いたかったからね。」

その名を聞いて、ひやりとした。

「仮にも正義のナカヨシ4人組、だものね。
 どうしても、あんたらには直接伝えたかったの。
 ガウリイの次に、大切な人間だから、ね。」
「つーことで、オレ達、結婚しました。これからもよろしく~。」

そういって、ガウリイがリナの肩を抱き、
二人してみたこともないような顔でにかっと笑ったので、
思わずぐっときた。

「・・・おめでとさん。」

自然と、生まれた言葉だった。
以前だったら、リナかガウリイか、
どちらかが照れて、どっちかが突っ込んで、
雰囲気をぶち壊すところだが、
そんなこと一切ない、愛に成長した姿があった。

 

 

その夜―――

おれはリナとガウリイと未だ共に行動していた。
再会久しいことと、既に宿を押さえていたこの夫婦の隣の部屋を確保するため。
そしておれは今しがた、リナ達との戦争という名の食事を終え、
その久々の仕事に疲弊しきったまま、ベッドにダイブしたところだった。
あの化け物級の風景は、いつまでも変わらない。

そしておれの部屋に近づく足音を耳に挟む。
その音の主が誰かかは、長年会っていなくともわかるほどの間柄だったと、
再確認した。

「ゼル~?まだ寝てないよなぁ~?」

世界が慄く、ドラまたを手懐けた、
もしかしたら世界最強のクラゲなのではないかという男が、
人懐っこい笑みを張り付けた色男顔を、ドアから覗かせた。

「なんだ、ガウリイ。」
「いやオレらさ、明日仕事の依頼が入っててここまで来たんだけど、
 ゼルも一緒にどうかなーって。」
「依頼?」
「うん、なんとかって国の王女さんからの。」
「そらまたどえらい依頼を。」
「うーん、なんかオレらのこと王女さんが前から知ってて、
 是非にってことだそーだ。」
「・・・お前らまた人脈広げたな」
「自覚ないんだけどなー。」
「そりゃそうだろう。」
「で、ゼルも一緒に行かない?」
「お前らの依頼に首突っ込んでもいいのか?」
「別に、いいんじゃないか?」
「おいおい。」
「ほら、王族に恩売っておくといい情報手に入るって!」
「・・・って、リナに言われたから来たんだろ?」
「うん!」
「相変わらずだな。」

ここでつくため息は、呆れ半分安心半分だ。
それでもにこにこと笑う最強のクラゲに、こっちの心も緩む。

「で?依頼内容は?」
「え?」
「いらいないよう、だ・・・って」
「オレが覚えてると思うか?」
「っ・・・だよな」
「そうそう!」
「はぁ・・・まぁ、オレも行く宛てが無くて途方に暮れてた所だ。
 おれも、人脈とやらを広げに行くとする。」
「お前さん、前より貪欲になったよなー。」
「そうか?」
「やっぱり、アメリアのせい?」

最強のクラゲ頭なのに、
一番の核心は誰よりも早く感じとり、一刀両断するのが、
この伝説の剣にふさわしい男であり、
おれがもう絶対一生叶わないと思わされる所以である。

「・・・そう思って構わん」
「そんで素直になったねぇ。」
「やかましい。」
「んー、でもさー、そのー・・・
 アメリアのために、元の身体に戻るって、あれだろう?」
「・・・まぁ」
「んー・・・なんていえばいーのかなー・・・
 おれ、知っての通り言葉にするのとか苦手だからさー、
 感じ取ることしかできないからさー、
 このー・・・もどかしさがあるんだけどさー。」
「なんだ、ガウリイともあろう者が、歯切れの悪い。」
「んー・・・おれはゼルの気持ちよくわかるし、
 オレも多分同じ立場ならそーするんだけどー・・・
 リナは、怒るんだよ。」
「あ?」
「いや、前にさ、新婚の時だったかな?
 あいつも色々あってさ、喜ばせてやりたいなーって思ってさ、
 リナがずっと前に言ってた伝説級にうまい魚ってゆーの、
 ちょうどそんとき泊まってた街から近い漁港で獲れたってゆーからさ、
 買いに行ったわけよ。」
「お前、本当リナのこととなると物覚えイイよな。」
「えへ。でさ、伝説級なもんだから、速攻で無くなってて、
 おれ悔しかったから次の日の早朝に自分で獲りに行ったんだー。」
「ほお。」
「でさ、その伝説級ってのが、海の主ってことみたいで、
 しかもめーちゃめちゃ強くてさー!
 水中で何度も呼吸困難になって、
 何とか獲った後も、しばらく酸欠で意識なくしちゃってさー!」
「おい。」
「で、そんな思いして獲った主を持って帰ってさ、
 一目見るなりそりゃもう思いっきり殴られたんだ。」
「・・・・」
「リナはさ、その主の希少価値も知ってて、
 それを獲ってくることの危険さも知ってて、
 でも今、一番大事なのは食べることよりも、
 おれと過ごす時間なんだ、って。
 昔の自分なら、そんな無茶も食欲にかまけて、
 オブラートに包んだ自信を糧にやってのけちゃうけど、
 今は自分だけの身体じゃないから、ってさ。」
「・・・っ」
「それ泣きながら言うんだもんな、勘弁だよ。」
「・・・ガウリイ」
「ま、こっちは良かれとしてやったことも、
 案外からまわりーってこともある、って話さ。」
「え・・・」
「そゆこと、だろ?」

そしてそれが何でもないかのように、さらっと話してにかっと笑うガウリイ。
それがなんだか喉に引っかかって、なかなか声が出なかった。

そんな調子で、
しばらくぶりだったガウリイとの語らいは、
ガウリイのリナとの波乱万丈新婚生活武勇伝を肴に、
しばらく時間を忘れるほど、続いて夜が更けた――――

 

 


「ヴァイナハテン・・・」

仕事の依頼をうけた、その国は極寒の北国だった。
あまりに優しく降り注ぐ牡丹雪と、
その中でも活気逞しく暮らす人々。
まるであの国と同じように、国民が幸せそうだった。

「依頼人に会いに来たわ。リナ=インバースよ。」
「どうぞ、お入りください。」

どうやらリナ自身も、依頼については詳しく聞いていないそうだ。
断ってもいいから、とにかく一目会いたい、と言われたので、
無下にも出来ず、こうして赴いたわけである。
にしても――――なんとも物好きな女王様もいたもんだ。


応接室で、数分待たされた後、
ふいに大きな扉がゆっくり開いた。
そこから出てきたのは、気配だけでわかる、
この国の王である、女―――
プラチナブロンドの髪、肩より長めのストレート。
吸い込まれそうな翡翠色の瞳、
そして耳元のルビーのピアスが目についた、
美しい女性だったが、
そういう見た目良さ気な女には、必ず鋭い棘が隠されてる、
と、今までの女性遍歴からおれはそう既に結論付けている。
隣のガウリイも、無意識に探るような表情をしているところを垣間見、
そうだ、こいつと女性遍歴は同じだったと、
妙な安堵を覚えた。

「ようこそ!リナ=インバース様!
 わたくしはヴァイナハテン王女、クリスティ=ナタリスと申します。
 あなた方にお会いできますことは、
 ご依頼させていただいた時より楽しみにしておりましたわ!
 このたびは遠路遥々、このような極寒の地に赴いていただき、
 誠に感謝しております。」

その言葉の熱の籠りようといったらない。
リナの手を両手で大事そうに握るは、
端々にほとばしる興奮のため、その握った手をぶんぶん振るは、
気迫負けなぞ滅多にしない、我らがリナ=インバースが、
それにおいては今回、完全に敗北している。
まるで無血開城だ。

「お話は色々聞いてますのよー?
 でも、聞いて思っていたのよりずいぶん可愛らしい方なのね?
 そちらの殿方は・・・」
「金髪の方が、あたしの旦那のガウリイ、
 もう一人が、旅の仲間のゼルガディスよ。」
「え!?あなたご結婚されてるの!?」
「世間での浸透率は、まだ低いですので。」
「まー!そーなのっ!?って・・・」
「ナタリス様ー!!そろそろ行かれないと、本当に遅れますよー!!?」

王女の世間話に、割って入るは恐らく重臣の方々。
最早両腕に掴み掛る勢いであるからして、
余程切羽詰った状況とお見受けする。

「え!?もうそんな時間っ!?
 やっだもうホントごめんなさい!?
 来て下さって早々退出しなきゃならないなんて~!!
 すぐ終わらせて帰ってきますので、
 お願いだから依頼うけてちょうだい!?ねっねっ??」

そうして5分としないうちに、
近所のおばちゃんのような王女は去って行った―――

「・・・なんだったんだ?」
「おれなんか一言も話してないぜ~?」
「この自由な感じ・・・これだから王族ってやつは・・・」
「堅苦しくても、ぶち壊すだろ、お前なら。」
「まーねぇ。」
「で?おれたちは一体何すりゃいいんだ?」

ごもっともなガウリイの言葉に、
おれたち三人はそろってぐるりと、
残された重臣に焦点を合わせた。

「で?あたしたちへの依頼って、なんなのよ?」
「はい・・・あの、子守りでございます・・・」
「は?」
「ですから、子守りを、ご依頼いたします。」
「はあっ!?」

 


「こちら、現在わが国では第一王位継承者、
 ナタリス様のご子息の、クリスティ=ゲナ様。」

現在若干――――5歳、だそうだ。

漆黒の髪、翡翠の瞳、
重臣の手を握り、緊張しているのか警戒しているのか、
まだわからぬその顔には、無表情が張り付いている。
5歳、ともなればそれ相応平均的な身体つきがあるだろうが、
彼はそれより少々小さく、
一見実年齢よりもう少し幼く見える。

「・・・リナが、子守り?」
「あたしだけじゃないわよあんた達もよ!」
「にしても、よく引き受けたなお前・・・」
「だってしょうがないじゃな―――いっ!!!」

実際、リナの痛切な叫びには致し方ないものがある。

クリスティ=ゲナ第一王子は、
誰の血をひいたのか、その小さい体には不釣り合いなほど、
大きな魔力を持っているそうで。
両親どちらも、魔力のまの字も知らず、
しかもこの国に魔導師はほぼおらず、
今は専属の魔導師を1人雇っている、程度である。
彼のことを考えると、きちんと魔力をコントロールできるような教育をさせたいらしいが、
まだまだ小さな国で、それほど大きく発展もしておらず、
地方から知識を、ましてや魔力における知識など、
得られる当てもなく、彼は5歳を迎えてしまったそうで。

「・・・で、その5年のうちでまだ特に問題はなかった、と?」
「それが唯一の安心ごとでして・・・はい。」
「そんで、その専属の魔導師さんとやらが、
 まぁ言ってみりゃベビーシッター的なものだった、と?」
「そーゆーことでございます。」
「で、その人はどーしたのよ?」
「あの日でございます。
 しかも重い方でして、床に伏せております。」
「・・・・・・ちょっとは言うの躊躇しなさいよ・・・」

とまぁ、こんなのっぴきならない理由であり、
一瞬しか会えなかった王女様にも、「是非、居てくれ」と、
いったニュアンスの捨て台詞を残され、
こちらとて断る理由もなく――――

「・・・いいわよ、やりゃいいんでしょやりゃぁ!!」

リナの、なんとも複雑な声が響く羽目になった。

 

「見たところ、魔力の暴走もアレルギー的なものもない!
 ただ単に、魔力に馴染みのない国柄に生まれた、普通の子よ。」
「じゃぁ、なんも特別なことはせんでいいのか?」
「そゆこと!」
「なんだ、よかったなぁ、坊主!」
「じゃぁ、そのことを重臣なり誰かに説明して、
 依頼自体なかったことに・・・」
「ちょぉっと待った。」
「何だリナ。」
「なーんもしないで、お金もらえるのよ?」
「・・・・相変わらずで、ウレシイよ。」

かくて、最強の魔術師と、剣士と、魔剣士による、
一日ベビーシッターが、はじまった。


「ねぇ・・・魔術師さんって、こーゆー肌の人もいるの?」
「・・・・」

ゲナ王子の、純真無垢なただの興味による質問は、
彼が大人しく一人で用意されたおもちゃで遊んでいたため、
暇を持て余した大人たち約2名が眠りに完全に落ちた、
そのすぐ後に、急に発せられた。

「・・・岩、みたい。」
「・・・岩だ。」
「すごい。魔法ってそんなこともできるんだ・・・」
「これは、絶対に真似するな。」
「なんで?強そうだよ?」
「強いが、代わりに大事なものを失くすんだ。」
「・・・そうなの?」
「そうだ。」
「お兄さんは、何を失くしたの?」

―――この感覚は。
純真で、何事も真っ直ぐしか物を見ず、だけど眩しい。
そんなどこぞのお姫様と話している感覚だ。
あいつは――――5歳児と同じなのか?

「何を失くすの?お人形とか、本、とか?」
「・・・人としての当たり前の生活や、平和や、人、とか。」

子供相手に何を本当のことを話しているんだ。
ただの嘘ならつけるが、優しい嘘なぞ未だにつけない。

「じゃぁ、ぼく絶対使わないね。」
「えらい素直じゃないか。」
「ぼく・・・魔力があったっていいんだ。
 とくべつな力なんでしょ?
 その力で、母さまが守れないなら、いらない。」
「お前が守るのか?」
「うん、うち、父さまいないから。」

そういって、彼は話しながらずっとおもちゃをいじっていたが、
ふいと上に視線を投げた先を一緒に追った。
棚の上、一番日当たりのいい窓の下に、
女王と、彼と、もう一人、彼にそっくりな男が描かれた肖像があった。

「ぼく、父さまのこと大好きだったんだけど、
 もういなくなっちゃったから、どうしようって思ったんだ。
 でも、母さまが、ずっと好きでいたらいい、って。」
「・・・そうか。」
「でもぼく、母さまがいちばん好き。」
「・・・そうか。」
「だから、ぼくが守るんだ。」
「・・・」
「ねぇ、どうやったら魔力で母さまが守れる?」

ただ、ただただ大好きなんだ。
理屈とか、そういうの全部無にして、
ただ正直な、本当の真っ新な気持ちになって残るものは―――

 

では、どうすればいいんだ?

 

「・・・おれにも、よくわからない。」
「・・・お兄さんでもわからないこと、あるんだ。」
「そりゃぁ、な。」
「だって、そこのお姉さんはなんでも知ってそうだけど、
 何かきいたらいけないって気がするし、
 そこのお兄さんは、何にも知らなそうだし・・・」
「はっ、大した洞察力じゃないか。」
「どうさつりょく?」
「人をよく見てるってことだ。」
「ふーん。」
「で、なんでおれに聞いた?」
「聞いてもよさそうだったから。」
「おれも評価されたもんだな。」
「そうなの?」
「そうなの。」

そういって、おれは王子の頭をなでた。
子供の頭をなでるなんて、何年振りだろう。

「大きくなって、ちゃんと母さんを守ってやればいい。」
「いつになったら大きいの?」
「少なくとも、さっき初めておれに話しかけてきたお前より、
 今のお前のが大きくなっているはずだ。」
「そうなの!?」
「そうさ、人間はなんもせんでも大きくなるもんだ。」
「す、すごい!」
「その間で、いいもんも悪いもんも知っていけ。
 その中のいいもんしこたま抱えて、母さん守れ。」
「・・・うん。」

そう言ってふわりと笑った顔が、
女王陛下そっくりだった。

 

「お兄さんが守りたいのは、だあれ?」
「・・・」
「ねぇ、だあれ?」
「・・・・・・お前によく似た、お姫様だ。」
「お姫さまかぁ!じゃぁお兄さんは騎士さんなんだね!」
「・・・そう、だといいな。」
「母さま、いつも言ってるよ?
 『母さまの騎士さまは、勝手に自分の都合で母さまの前から消えちゃった勝手な人』って」
「・・・自分の息子になんてことを」
「『でも好きな人』だって。」
「・・・」
「ぼく、騎士さまみたいに、母さんの前から消えないよ。
 ちゃんと傍で守ってあげるんだ!そうでしょう?」

 

あぁ―――――子供って残酷だ。

 


「女王陛下が、お戻りになりました!」

そう告げる誰かの声に、
声を上げる暇も惜しいのか、王子は子犬のように駆けていった。
その後をゆっくりついていくと、
大回廊のど真ん中で、多くの重臣たちが温かく見守る中、
王子と抱き合う母親の姿があった。
彼女が、クリスティ=ナタリス王女。

「ありがとうございました!」

顔をあげるなりおれと目が合い、心からの言葉を賜った。
その笑顔が、王子そっくりだった。

 

「では、ゲナは普通の男の子として生活しても大丈夫なのですね?」
「そ。魔力持ってるからって、特別なことはないのよ?
 ただ、彼自身がその力を伸ばしたいと思っているなら、
 魔導士協会からでもなんでも、講師を呼んで、ちゃんと鍛錬すること。」

女王陛下自身の希望により、
おれたち3人と、王子を加えたお茶会が開かれた。
といっても、王子は1人で絵本読みに耽っている。
議題は、ゲナ王子の魔力について。

「なんなら、紹介状でも書きましょうか?」
「いえ、ちゃんと紹介をうける宛てはございますわ。
 今日はそのことを含めた会談に行ってまいりましたの。」
「宛て?」

リナは怪訝そうに問い返す。
お世辞にも、大きな国との貿易等が栄えそうな国ではないと思っていたので、
この返答にはおれも少々的を得ない。

「えぇ。たまたまあなた方に依頼する日と被ってしまって、
 さすが、何か妙な縁がおありなんですね?」
「あの・・・クリスティ女王陛下?」
「ナタリス、と呼んでいただけませんか?リナさん。」

国のトップのこのフランクさ。
少々面食らうリナだが、フランクな王族には免疫があるおれ達は、
早急に精神を立て直す。

「で、ナタリス女王?あなた今日どこにいらしたの?」
「セイルーンですわ。」
「「え。」」

絶句するリナとガウリイ。
あまりに予想外の国名に、おれは茶を吹きだす。
しまった!鼻に入った!

「セイルーンって・・・アメリアに会ってきたのかぁ?」
「えぇ。あなた方に依頼した、って言ったら、大爆笑してましたわ。」
「・・・あの娘は・・・って、
 お話は聞いてます、ってあなた言ってたけど、それってアメリア!?」
「その通りです。」

そういってまたくすくす笑うナタリス女王。
とんだ爆弾が投げられたもんだ。

「是非、今のセイルーンに立ち寄ってみて下さいな。
 現在あちらの国は、クリスマス一色ですので。」
「くりすます?」
「冬の年明けまでの雪の降る時期を、我が国ではクリスマスと言って、
 モミの木に色とりどりの飾り付けをしたり、
 家族や友達同士でプレゼント交換をしたり・・・
 今年最後のお祭りをするの。」

通りで、この街の雰囲気が独特だったのは、
この祭りの真っ最中であったというわけだ。

「我が国の風習をセイルーンに取り入れる交換として、
 セイルーンの魔導の知識を、って話をしてきたわ。」
「そーゆーこと。」
「クリスマスかぁ・・・楽しそうなこと好きだよな、あそこも。」
「そーね。」

和気藹々と話をする3人を横目に、
おれはどうしても王女に訪ねたかった。


―――アメリアは、息災であるのか?


リナかガウリイが聞いてくれないものか・・・
いや、何故かそれは嫌だと心が叫んだ。
おれが、聞きたい。

「アメリアさん、お元気そうでしたよ?」

そーでしょうね。そっかそっか、とリナとガウリイは言うが、
何故か女王の目はおれを据えているような気がした。
心を見透かされたような、居たたまれない気持ちに陥り、
おれは茶の水面に浮かぶ、情けない自分の顔と目を合わせた。

 


「じゃ、あたしたちはこれで。」
「はい、少しの間でしたが、お話ができて光栄でしたわ。」
「こちらこそ。」

ささやかながら、おれは少々不毛だと感じる報酬をいただき、
おれ達はヴァイナハテンを後にしようと、その時―――

「お兄さん!」

おれの足にぶつかる温くて軽い重量感。

「まぁ、ゲナ。」
「ぼくにもお見送りさせてよ。」
「・・・あぁ。元気でな。」
「ん!」

そういって、彼は小さな小さな小指を差し出してきた。

「ゆびきり!」
「は?」
「ぼくは母さん守るから、お兄さんも消えない騎士さんでいてね!」
「ばっ・・お前、こいつらの前で・・・!」
「ゼルちゃんは、誰を守りたいんだっけ?」
「え」
「王子さまに似た、お姫様だっけ?」
「お前ら・・・起きとったのか・・・」
「ね!ゆびきりー!!」

 

――――ゆびきりなんて

 

おれはしてもいいのだろうか。
おれは未だに、誰も守れていないのに。
守れないゆびきりなんて、こんな純真な少年と、
交わせない。

「・・・あなた、やっぱり・・・」
「母さま?」
「・・・つめたい手の、人ね。」
「え。」
「アメリアさんが、そう言ってたわ。あなたのこと。」
「・・・・アメリアが。」
「そ。だからわたくしからも言わせてちょうだい。」
「何を」
「―――消えない騎士でいて。」


そういった彼女の目が、
―――――彼女と、重なった。

 

果たして―――
今おれがしていることは最短距離と言えるのだろうか?
最早、思い切りいつも通り遠回りをしているとしか、
思えなくなった。

伝説級の希望を叶えることが、
彼女を失わないためのスタートライン。
この思考に縛られていたおれは、
とりあえず口づけをした本当の気持ちを本人に伝える、という、
ふと見えた幻に魅入られた。

 

 

「あれ・・・?あそこにいるの、
 リナ=インバースじゃないかっ!?」
「さすが・・・姫様が三日で見つかると言われたのは誠だった・・・」

ヴァイナハテンから離れて、少し歩いたその先の。
後方からそのような囁き声を聞き、
おれ達三人は怪訝そうに振り返ると、
見慣れたセイルーン兵士達が、嬉しそうな怯えたような、
複雑な表情で駆け寄ってきた。

「何よ、あんた達。」
「セイルーン兵でございます!」
「んなこたわかってるわよ!!何の用よ!?」
「こちらを、リナ=インバース殿、ガウリイ=ガブリエフ殿にお渡しするよう、
 アメリア様より承ってまいりました所存です!」

差し出されたそれは、
クリスマスパーティーたるものの、

「招待状?」
「そんなもんなくとも、今から行こうとしてたとこだぞ~?」
「・・・おや、そちらの方は・・・
 もももしやゼルガディス殿ではありませんかっ!!?」
「あぁ。よく覚えていたな。」
「す・・・すごい!!絶対見つからないと思っていたのに・・・」
「一ヶ月以上野宿は覚悟していたのに・・・!!」
「おい」
「何より丁度良かった!こちら、あなたにも。」

す、とおれにも同じものを差し出された。
おれの所在がわからなくても、これを宛ててくれたアメリア。
―――これは、肚をくくらねばならんの、か。

 

進んでいくたび、降雪量が影をひそめる。
まだ心中これと決めた想いは迷子のまま、
その想いの、首根っこを掴む奴が、ここにいた―――

 

「ねぇゼル。」
「なんだ。」
「あたし、ガウリイと一緒になれて・・・安心してるのよ。」
「何だやぶから棒に。」
「・・・あたしね、
 愛する人を亡くした人と戦ったことあんのよ。」
「っ・・・」
「未だにうまく言えないんだけどね、
 あんな風に人を愛してる人に会うの、はじめてだったの。
 あたしがあっちの立場だったら・・・
 正直、考えたくない。」

はっと――――思い出した。
この女は、旦那と何を天秤に賭けたか――――世界だ。

「ガウリイに―――1度だけ教えちゃったの、あたしを亡くすこと。
 だから、もうそんなこともう2度とごめんだから、
 オレにお前を守らせて、っていうのがプロポーズの言葉。」
「ガウリイ・・・」
「元気そうに見えて、平和そうに見えて、
 人の命はいつか目を離した隙に、消えるものなのよ。
 あんたなら、言われなくても知ってることでしょ?」
「・・・あぁ。」
「あたしは、そこまで想える相手を見つけられる方が、
 異界黙示録を見つけるより奇跡に思えるって言ってんのよ。」

 

リナ=インバースという女は、
その言動1つで、どのような世界も変えられる、そんな女だ。
―――なんどこの女におれの世界を変えられてきたか。

 

「で?そんなあんたが行く先は?」
「・・・・・しばらく、共に旅することになるが、かまわんか?」
「素直にセイルーン行くって言いなさいよ。」
「お前に素直さを指摘される日が来るとはな。」

 

 

自分の蒔いた種が、
どんな花を咲かせるのか、そもそも咲かないのか、
皆目見当はつかない、つかないが、
――――芽は、顔をみせたようだ。

 


 

つづく

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