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なまこのスレイヤーズ・ゼルアメ中心のブログです。 各種版権元とは一切関係がございません。
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今日は堂々とラブの日ですね。
皆さんのもえんたいんでーが楽しみです(今全力で台無しにした)


そして、やっぱり行事にはのっかっていきたいなまこは、
つづきから小話をのっけました。
お暇があったらどーぞです。

んでもって昨日。
陽子氏主催のスレイヤーズ絵チャに参加してきました。
なんだあの豪華なラインナップは・・・!!!
って画面の前で思わず声に出すほどの、豪華な参加者様の中に、
ポツリと、ずーずーしく参加させてもらいましたーvv

切実に、ペンタブ欲がなまこの中に浮上www

でも、マウス使いっていう一種の個性が奪われるのも、
と考えるどんだけ立場ないんだあたしwwww

全てはマネー次第だな(・∀・)アハハン


主催の陽子氏をはじめ、参加者の皆皆さま、
本当に楽しい時間と素敵な目の保養をありがとうございました―――vvv


そして皆さん素敵なバレンタインをvv





―――――――――――――――――――
「父さ――――ん!!!おっはようございまーす!!」
「アメリア!!今朝もよい天気じゃの―――!!」
「はい!!正義日和です!!とゆーわけで・・・!!」
「んん?」

「ハッピーバレンタイーン!!です!!」



【戦場のハッピーバレンタイン】




天気も上々!気分も上々!!
開け放った窓からの空気はすっごく冷たくて、
ちょっとだけ気分は引き締まりました。

だって今日は

年に一度の、女の子の決戦の日ですもの。



「それでは!アメリア行ってきまーす!!」

学園理事長の父さんは今日も帰りが遅いです。
だから、早起きして正義のチョコを渡せてよかった♪

登校中、もう一度荷物を確認・・・
リナの分、ガウリイさんの分、アルフレッドの分と・・・
これは、ゼルガディスさんの分、っと・・・
大丈夫!ちゃんとあります!!

毎年この日にそこまで思い入れはありませんでした。
季節の挨拶程度、近所の人たちに渡し歩いていたくらい。

でも―――今年は、違います。
周りの女友達が色々な想いをもってこの日を迎えていることを知ってました。
今日は、その気持ちを私も持っています。
今かばんの中で息を潜めている特別な思いを込めた、
たった一つの甘味料は、私の想いの化身です。
嬉しくて、恥ずかしくて、その全てが心地よい想いとして体中を巡ってる感じ・・・。
いつもの、ただ甘いだけのチョコレートとは全然違う。

―――ほろ苦い、あなただけのチョコレート。


あぁでもでもでも!!!
ほとんど毎日会ってるはずなのに、


――やっぱり緊張します!!!すんごく緊張します!!!


どうしましょう・・・今からこんなんで、
ちゃんと渡せるんでしょうか・・・?


手と足を同じタイミングで出さないようにしながら、
ぎこちなくいつもより早い朝の道を、学校に向かって前進するは―――
正義の使者!!アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン、です!!!



「おっはよー、早いじゃないアメリア」
「―――――っっ!!??・・・あ、リナ・・・」

下駄箱で緊張してた私にとって、あまりに刺激の強い声に思わず肩もあがる。
そんな私をリナは、女子剣道部の白い道着を来て、
竹刀を肩に担いだまま、とても怪訝そうな顔でみていた。

「・・・あんた、逆立った猫みたいよ?」
「そ・・・そうですか?」
「ふふっ、朝からそんなんじゃ、一日持たないわよ。」

怪訝な顔から一転、あの太陽のような笑顔でにかっと笑う。
その顔をみたら、ちょっとだけ心が軽くなった。
すごいな、リナの力は。

「リナは朝練中?」
「もう終わったとこ。」
「じゃぁ、こーれ!」
「うっはぁ!サンキュー!バレンタイン万歳ねー!」

そういって彼女は、さっそく私の渡した包みを開け、
大好きなマカダミアンチョコレートを一口。
本当においしそうに食べてくれるから、作った甲斐がありますね。

「そう、朝練終わったとこよ?」
「え?」
「渡しに行かなくて、いいの?」

剣道部の、朝練、が、終わっ―――はっ!!

「まだいるんじゃない?」
「はいっ!!」

そう行って駆け出す直前にみたリナの顔は、
やっぱり太陽のようだった。


「おー!アメリアじゃないか。」
「ガウリイさん!」

男子剣道部の部室の前、意を決してドアを叩こうとした時、
先にドアが開いて、代わりに陽だまりのような笑顔が出てきた。
――両手に、紙袋いっぱいのチョコレートを持って。

「ガウリイさん・・・まだ朝なのにすごいですね・・・。」
「いやー。なんか部活のロッカーに入っててさ―。
 毎年ありがたいよなー!!あっはっはー!」
「それにしても・・・すさまじい量ですね・・・お店でも開けるんじゃないですか?」
「肉なら一人で食えるんだがなー。
 甘いもんだと、まぁ、食えなくもないが・・・
 だからさ、あとでリナと分け合って食うんだ。
 あいつ、マカダ・・・なんとかチョコ好きだからな。
 なんなら、アメリアも一緒に食うか?お前さん甘いもん好きだろ?」

陽だまりぽかぽか笑顔で、女の子の決戦日に対して大変残酷なことを言うは、
学園一の色男である、剣道部の主将さん。
私は苦笑しながらも、かばんの中から包みを取り出す。

「いつもお世話になってます。リナとどうぞ。」
「おお!ありがとなぁー!!」

ガウリイさんには、チョコレートクッキーやらチョコレートドーナッツといった、
ボリューム満点のチョコレートお菓子セット。
これならあのブラックホール胃袋も満足でしょう!ふふーん!

「これは、ちゃんとオレが食べるよ。
 せっかくアメリアが作ってくれたんだしな。」

そういって、いつもの笑顔をのせながら、頭をなでてくれた。
リナや他の女の子たちには悪いけど、
この誰の心も掴んで離さない笑顔を独占できて、ちょっと優越感です。

「それで・・・あのぉ・・・」
「ん?」
「・・・今ここにいるのは・・・ガウリイさん、だけですか?」
「あぁ。」

――――あっさりと・・・

「あいつ、今日日直だからさ、早めに行ったんだ・・・。」
「・・・そうだったんですか;;」

大丈夫・・・大丈夫です!!!
くじけるな正義の使者アメリア!まだ朝です!!
これからいつもでチャンスはあります!!

「あいつならいつでも呼んでやるからな?」

そう優しく言ってくれたガウリイさんに、ガッツポーズで返事をした。



――――にも関わらず、
チャンスだと思っていた昼休みにも会えませんでした。
なんで・・・!?どうしてでしょう・・・!!?
昼休みにお弁当食べて気合をいれて、3年生の教室に行ったのに・・・
そこにいたのはガウリイさんだけで、

『あいつ、女どもがうるさいから、って図書館に行っちまったぜ?』

って言われたから図書館に行ったのに、
いたのはゼロスさんだけで、

『誰もいませんでしたよ?』

なんていつもの笑顔で言われちゃって、
また教室に行ってみたらガウリイさんとリナもいて、
私の顔をみただけで全てを察知してくれたのでしょうか、

『まだあいつに会えないの!?』
『はい・・・』
『ちょっとガウリイ!間違った場所教えたんじゃないでしょーねぇ!?』
『んなわけないぜ!?絶対忘れないようにオレ、手に書いておいたもん!』
『も―――!!どこ行ったのよあの朴念仁!!』

リナがそう叫んだ途端、昼休み終了のゴング(チャイム)が鳴った―――




最終決戦時間(ラストチャンス)―――ついに放課後。

今日は応援部も合気道部もお休みで、
でも剣道部は相変わらず放課後も練習です。
終わるまで待って、その時に―――

ちゃんと渡すんです。

「アメリア?」

まさか―――と思って振り向いたその先には、

「あ。アル!?」

私ったら・・・あの人じゃないことにがっかりしてる・・・
なんかすっごく勝手な子みたいに思えて、
幼き頃から家族同然の彼の顔を、まっすぐに見ることができなかった。

「アメリア、これから部活?」
「いえ・・・今日は部活はなくって・・・あ!!そうこれ!」

話をそらすように、私はかばんから季節の挨拶を取り出した。
アルには毎年、3つのトリュフチョコ。
父さんやご近所の皆さまに渡すものと同じもの。

「いつもお世話になってます!帰ってから渡しに行こうと思ってたんだけど、
 今会えたから、どうぞです!」
「あぁ。毎年ありがとう、アメリア。」

にっこりと、毎年同じ笑顔。
ふと、アルの手元をみると、ガウリイさんほどではないけど、
バックから可愛い包み紙がはみ出していた。

「うふふ。アルもモテモテですねv」
「やだな、そんなんじゃないよアメリア。季節の挨拶だろ?」

スレイヤーズ学園の副会長であるアルは、
人当たりもいいし、仕事もできるし、頭も運動神経も抜群で、
そうですよね、これだけそろっていれば女の子にもてるのもわかります。
同じセイルーンの名前を持っているのが、誇らしいわ!

「それじゃぁアル!おじさまにもよろしくね。」
「あぁ・・・アメリア!」

アメリアも気をつけてね、そう返されるのかと思って手を振ったのに、
思わず呼び返されて、振っていた手が不自然になってしまった。

「どうしたの?アル。」
「君は・・・どうなの?」
「なにが?」
「君にとって、このチョコは・・・季節の挨拶?」

そうですよ。って言えませんでした。
どうしてでしょう、そう言ったらいけない気がして―――
アルの何故か縋るような目を見たら、胸が冷たくなった―――

「―――季節の、挨拶だもんね。嬉しいよ。」

何て言えばいいか迷っていると、アルからそう言ってきた。
私はアルの顔をもう一度直視することが、できなかった。
一瞬みた彼の顔は―――諦めたような、絶望するような目・・・


どうして、あなたがそんな顔をするの―――?


「じゃぁね、アメリア。フィルおじさんによろしく。」

さっき一瞬だけみた顔が気のせいだったかのように、
アルはいつもの声で、私に声をかけて去って行った。

「・・・頑張ってね。」

そう言った彼の声に、私の全てが萎縮してしまった―――
なぜだかわからない、彼の絶望に飲み込まれるように。


気が付いたら日がとっぷり暮れていた。
茫然と昇降口で空を見上げていたはずなのに、
夕日が傾いていることにも気づいてなかったなんて、とんだまぬけ。
慌てて携帯で時間を確認すると、とっくに部活は終わっている。

「・・・あぁ。」

思わず、口からこぼれた声に、希望が混じっていないことは明白。
それでも一応、彼に電話をかけてみた。
電話で呼び出しは、なんとなく邪道だと思っていたのに、
今私は、寒くて手の感覚も感情も、すっかり麻痺していた。

5、6回のコールにも、反応はなかった。


諦めて、携帯を切って、
部室に行ってみようと思って、身体を動かしたとき、
目の前の光景に、目眩を感じた。

「・・・ずっと前から、憧れてました・・・大好きです。」

右側の校門にいた私の、その目の前。
客観的には左側の校門で繰り広げらていた光景は、



朝からずっと探していた人が、
知らない女の子からチョコレートをもらっていた―――




気づいたら息が切れて人影のない場所でへたりこんでいた。
一番恐れていたことが、私の目に焼き付いて、震えがとまらない―――


学園に入って2年間、私たちに会うまではずっと包帯で素肌を隠していた彼は、
それを全て取っ払うと、誰もが騒然とするほどの魅力を持ち合わせていた。
移植した肌こそ人とは異なるが、
鋭い眼差しは射抜かれたら誰だって心揺らぐ。
厳しい言葉ばかりを連ねるその音は、本当はすごく優しい。

そんな彼に、私はどうしようもなく惹かれて―――


でも近くにいすぎて、いつも怖かった。
―――私以外の、誰かの隣で笑うあの人をみることが。

いつか、必ず訪れてしまうその瞬間。
わかってたんです。彼の隣にいられるのは、私じゃない、って。
だって、近すぎたから。
いつも一緒にいて、家族みたいだったから。

家族のように大切に想われていても、
あの眼差しが私を恋越しには見てくれないんです。

「・・・わかって、いたのに、なぁ・・・」



広すぎるリビングの、大好きなソファーの上に、
錆びついた魂しか宿していない体を全部投げ出す。
私しかいない空間に、まだ未練がましく残っている、
彼にだけ渡せなかった包みが、かばんの中でカサリと鳴った。
その音が、いやに耳に付いた―――



ピリリリリリリリリリ
―――何も考えられない静寂の中で、鳴り響く私の携帯電話。

誰か確認するのも億劫で、でもとりあえず出てみた。

「・・・もしもし?」
『アメリアか。』

錆びついた魂が、凍りついた。

「・・・・・・・ゼルガディス、さん?」
『当たり前だろ、ってお前誰だかわからず出たのか?』
「いえ・・・あの、その・・・」
『まぁいい・・・どうした?』
「・・・は?」
『んん?お前の着信履歴が残っていたから掛け直したんだが・・・』

しまった。一回ゼルガディスさんに電話してたこと、
すっかり忘れていた―――

「あ・・・えーっと・・・間違いです。」
『間違い?』
「はい、そうです・・・リナにかけようとして、間違えたんです・・・。」

正義を掲げる自分の口から、咄嗟に出た嘘に驚いて声が小さくなる。
ひどく情けない。
大好きな人に嘘までついて、私は一体何を守りたいんだろう―――

『・・・そうか。』
「はい、ごめんなさい。わざわざ掛け直してくれて・・・」
『いや・・・別に・・・』

どうしたんだろう。
いつもなら要件すんだらすぐ切るのに。
これ以上、あの心臓が高鳴るほどの心地よい声をきいていたら、
絶対こみあげてきてしまう。
先ほどまでの、悔しさが。敗北感が。
みっともないほどの、嫉妬が―――

「・・・あの」
『おーいゼルガディスー!』

ぎこちない雰囲気にまるでそぐわない青空のような声が、
小さくだが電話越しから聞こえた。
間違いなく、ガウリイさん。

『おーゼルー!いるなら返事しろよー。』
『・・・おい』
『あ?電話中か?珍しい。誰ー?アメリア?』

何故一番の候補にあがるのか皆目見当がつかないが、
予期せぬ人物に名指しされ、思わず心臓がドキリとはねる。

『チョコ、結局もらえなかったんだよなー、お前さん。
 しかも今日断り切れなかったお前さんのチョコは全部オレとリナの腹んな――』
『悪いアメリア、切るぞ。』

ブツッ

電話からこぼれる、ツーツーという音が、しばらく空気に溶け込んでいた―――



今のを、一体どう解釈すればいいんだろう。
ゼルガディスさん・・・もらったチョコは全部二人にあげて、
そして私からはまだもらっていなくて・・・
もらえなくて・・・?

―――まさか

都合のいい理想が一瞬よぎった。
だけど、それを真実として掲げられるほど自信もなければ勇気もない。

ピリリリリリリリリ

「うきゃぁまたあぁ!!?」

驚きすぎて携帯落としそうになったけど、
相手はリナだったので出ないわけにはいかなかった。

「・・・はい?」
『あ、アメリア。どうだった?』
「・・・何が、ですか?」
『ゼルにチョコ。』

私が聞きたいです。

『・・・って、知ってるんだけど。』
「はい!?」
『まだ、あげてないんでしょ?』

あぁ・・・そのこと、ですか。
リナの呆れたような声の一呼吸あと、携帯ごしに盛大にためいき音が聞こえた。

『いーの?あげなくて。』
「・・・だって・・・」
『あんなに頑張って作ったのに?』
「うっ・・・」
『ゼルガディスさんは甘いもの嫌いだからー、
 今年はビターに初挑戦するんですー!じゃ、なかったの?』
「~~~リナのいじわる・・・」
『いじわるなもんですか失礼ね!!ホントのことでしょー!!』
「でも・・・」
『でもじゃない!!』
「だって・・・」
『だってじゃない!!』
「うぅぅうぅ~~・・・」
『怖気づくな!!』

盛大なため息から、叩きつけるような叱咤に変わる。
確かに・・・でもだってばかり言ったり、怖気づくのは正義じゃありません。
でも、今回は正義とは関係は・・・

『愛は正義だ!!』

――この娘は人の心でも読んだのだろうか・・・?
自分で正義との関係を断ち切ろうとした矢先に、
栗色の彼女はそれをさせまいと、断ち切る手を止めにきた。


なんだか、箍が外れた気がする―――


「リナ・・・」
『ほーら、頑張れる?』
「・・・はい!!」
『よーっし!行け正義の使者アメリア!!』
「はい!!アメリア!行ってきます!!!」

なんだか、元の自分に戻れた気がする―――


電話を切り、時計を見て愕然とした。
ゼルガディスさんは(とガウリイさんも)現在学園の寮暮らし。
当然、門限があって、それ以降は外出することが出来ないのは、また当然のこと。

その時間からきっちり一時間は過ぎていた。

「呼び出しは出来ないと・・・なると―――」

私は鞄の中のチョコという名の勇気の塊と、あるものを持って、
颯爽と夜の街を駆け出して行った―――



『愛は正義だ』
この言葉のみをガソリンに、私は全力で走っている。
わかってる、リナが正義という言葉を使えば私が動くと思っていることも。
そう。私はただ、きっかけが欲しかっただけ。
憶病と虚無感に片足突っ込んだ私に、そこからちょっと抜け出す力が欲しかっただけ。

そこから出れば、後は全速力でだって走れるの。
――――だって、彼を想ってるんだもん。



そこには、学生寮の前で息を切らしている私一人しかいなかった。

彼の人の部屋は、正面からみて左端3階のバルコニーのある部屋。
そこまで行く対策は、ちゃんとしてある。


そう、対策。


寮の門は大きな鍵で固く閉じられているが、別に越えられない高さではない。
木登りと同じ要領でなんなく乗り越えることに成功すると、
音も立てずに駆け出し、彼の部屋を見上げられる位置にまで移動をする。

そして私はあれをとりだす。

シュンッ!カシャン!!

「よし。」

ちゃんとかかった。
金具をバルコニーの柵に引っかける。ロープで。
彼の部屋から一直線にのびたロープにとびうつり、
懸命に握力の体力を使って、よじ登っていく。
すると―――

ガラガラと、窓の開く音がしたが、
私の視界に見える範囲ではないため、構わず登り続けた。
が。

「・・・・はっ!!?なっ!!?あぁっ!!?」

頭上からそれはもう驚愕して言葉にならない声が聞こえてきた。

「あっ!ゼルガディスさん。」
「アメリア!!!??おまっ・・・何やって・・・!!」
「ちょっと待っててください、今行きますから!」
「~~そうじゃないだろ!!」

言うなり、ゼルガディスさんは猛スピードでロープを手繰り寄せてくれた。
お陰でよじのぼる手間が省けてラッキーです。

「・・・ふう!ありがとうございます。」
「~~~!!!!???」

すごく何かを言いたいんだろうな、ということはわかるのだが、
口をパクパクさせただけで、何も言葉にならない彼は、
私が顔を傾けると、脱力したように顔をうなだれた。

「・・・お前・・・なんで来たんだ・・・?」

うなだれたまま、彼は問うた。
そのしぐさにちょっと決意が揺らぐが、思い切って鞄に手を突っ込んだ。
今度は私が顔をうつむかせ、手に持っている包みを、
要約彼の目の前に出した。

「・・・・・・受け取ってください。」

正義の使者、にしては情けないほどか細い声で。
包みを持っている両手はガタガタ震えているし、
絶対今の私の顔は真っ赤な泣き顔だ。

早く受け取るか、もしくはいらんと突き放して―――

そうすれば彼に顔も見せずにすぐに帰るから・・・!!

「俺に、か?」
「はぁ!?」

今、ここで、そういう反応をする彼の神経がわからない。
そう思って思わず素っ頓狂な声と同時に顔をあげてしまい、
完全に表情を見られてしまった。
しかし、彼はまっすぐ私をみて、もう一度言った。

「俺に・・・か?」

今までに聞いたことのないような、優しい声で、
でもどこか自信のないような、囁くような声で、
そんな声で訊ねるものだから、思わずただうなづいた。

すると彼はいつの間にか恐ろしいほど近くにいて、
私の手から、包みを受け取った。
目で、開けてもいいか?と問うものだから、私はただうなづくしかなかった。

彼にはもちろん、ビターチョコレート。
それでも甘味料には変わりないから、数は少なめ、大きさも小さめ。
―――でも、全部、ハート型なんです。
だから、目の前で開けられると、
本当は困るんですけど―――――

「わざわざ、これ届けるために、ロープでよじ登ってきたのかお前は。」
「そ・・・そうですよ!!い、いけませんか!!?」

笑いをふくめて言うものだから、思わずむきになって返す。
しかもどさくさに紛れてチョコを一口。
「ふーん。甘くない。」だの「これなら食えるぞ。」だの言いながら、
あっという間に(もともと数も少なかったですけど)チョコをたいらげた。

―――もっと味わってくださいよ、とは到底言えなかった。

「ごっそーさん。」

そう言って私の顔を覗き込む彼に、一気に顔面の血液が沸騰した。
もう・・・!!本当に心臓に悪いです・・・!

「そ・・・そうですか!!じ・・じゃぁ、私は、これで!!」
「待て。」

その二言だけで脳が止まれと判断するんだから憎たらしい。

「お前に言いたいことが3つある。」

そんなにあるんですか?
というような顔をしながら振り向いた。

「まず1つ目。寮の門限飛び越えてきやがって。しかも、なんだこの登場の仕方は。
 ロープ1本で、しかも制服のままときたもんだ。無茶をするのも大概にしろ。
 誠心誠意想いをこめまくって、まず俺に謝れ。」
「ひえ~~~ん!!・・・ご・・・ごめんなさい・・・。」

確かに、よく考えたら非常識にもほどがある。
夜遅くにバタバタと押し入ってしまって・・・
いくら緊急的状況だったとはいえ、完全に怒らせてしまったらしい。
そのことが、心臓を冷たくさせた。
でも、心の隅では後悔なんて全くしていない。

「2つ目。」

頭を下げたまま、私の体は彼の声だけに大きく反応する。
ただ一つだけ思うこと―――嫌われたくない。

「・・・わざわざ、来てくれたことには感謝する。」

―――は・・・?
その言葉に、ゆっくり顔をあげて彼の顔を窺うと、
目をそらしたまま、口元に手を当て、片方の手はポケットに突っ込んである。
そのしぐさは、照れているときの彼独特の癖。

「・・・あ・・えーっと・・・はい。」

彼が照れてくれたことが嬉しくて、思わず笑って返事をした。
そういったら、ゼルガディスさんは今度は後ろを向いてしまった。

「・・・3つ目。」

後ろを向いたままだが、構わず彼は続けていった。
少しためらった素振りを見せたが、首だけこっちを向けてこう言った。

vle.jpg

・・・そーゆーふーとは、一体どーゆーふーなのだろうか。
私は思わずいつもの彼のように、眉間にしわを寄せた。

「いいんだな?」

わからないのにダメ押しされた。
しかも、さっきまで首だけしかこっちを向いていなかったのに、
いつの間にか、また彼が目の前にいた。

「・・・・・はい。」

その近さと、声に、肯定を余儀なくされた。

「よし。」

そんな彼は、今日見た中で一番満足そうな顔をしていた。



「・・・すみません。送ってもらっちゃって。」
「問題ない。こんな時間にお前一人だけで帰らせるわけにはいかん。」
「そうなんですか?」
「・・・少しは自覚しやがれ。」

先ほどまで全力疾走していた道を、
今度はゼルガディスさんと二人で、ゆっくり自転車にゆられている。
はじめは自転車の二人乗りなんて恥ずかしくて拒んだのだけど、
無理やり乗せられた。

何だかすっごく不思議な気分。
今日は一日、緊張したり、落胆したり、浮かれたり、絶望したり、
感情の体力を使いすぎた気がする。
そのせいか、今彼の後ろでゆられている私の心はふわふわとしていて、
完全に力が抜け切れている。

終始無言なのに、気まずいどころか心地よくて、
どれだけ彼のことが好きだったか、自分の想像をはるかに超えた自分がいて、
そんな自分に驚いた。

こんなに、こんな感情になるほど、


ゼルガディスさんが好きなんだ―――――




「ほら。ついたぞ。」

気がついたらもう家の前についていた。
のろのろと自転車から降りると、また寂しさが胸を小さく突いた。

「ありがとうございました。」
「こちらこそな。」

軽く挨拶を交わすと、彼はさっさと自転車の向きを変えて、

「明日から、覚悟しろよ。」

そう言って、良く似合う不敵な笑みをしたかと思うと、
顔半分をマフラーで覆い、あっという間に帰って行った。

―――そういえば、そーゆー扱いだの、覚悟だの、わからないままだった。


放心状態で、でも心はふわふわで。
父さんはまだ帰ってきていないリビングの、
大好きなソファーの上に突っ伏す。
数分そのままでいたけど、お世話になったリナにはちゃんと報告を、
と思って、電話したらコール一発で出た。

やっぱりずっと心配してくれてたんだ。

『アメリア?どうだった!?』
「ちゃんと渡せました。」
『そう・・・良かったじゃん!』
「それでね・・・?」

放心状態、心はふわふわ。
そんな私が先ほどまでの出来事を逐一漏らさず報告すると、
リナの大爆笑が待っていた。
リナは、ちゃんと意味わかったのかなぁ?
だってリナにも『明日から気をつけなさいよー!!』って、
笑いをこらえながら言われたし―――

電話を切ったら、今度はメールが来てました。
ガウリイさんから。

『ちゃんとゼルに渡せて、よかったな。』

その一文だけ。
ゼルガディスさんから聞いたのかな?

そして、私は色々な人に支えられていることを自覚して、
ちょっぴり涙が出ました。



正義の使者。
アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。
今日は、愛の戦士として、立派に戦いぬきました。
途中で挫けたり、負けそうになって、諦めそうになって涙を流しましたが、
大事な仲間の後押しで、無事に最後まで戦い抜きました。

その結果がどうだったのか、まだわからないけど、
明日もまた、頑張っていきたいと思います。
―――頑張って、勝ち取りたい、気持だから。

アメリアは新たな感情を、手に入れました。
「恋に恋する」から「彼に恋する」に進化し、
甘くて苦い、余韻を残しながら、しばし夢の中に旅立ちます。


―――ハッピー、バレンタイン。

――――――――――――――――――――――――
なまこ的学園設定でバレンタインです。
なまこ的学園設定をちょっとだけ描いたことあるので、
興味がある方は前記事探してみてください;;;
見てくださった方、お疲れ様でした。ありがとうございます^^
PR
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