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なまこのスレイヤーズ・ゼルアメ中心のブログです。 各種版権元とは一切関係がございません。
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「も~~・・・!!皆すっげぇ優しいのなっ!!」
「・・・こんな優しさ、おれはいらない・・・」




二 日 連 続 更 新 とか。

頼むよなまこ。もう現実逃避は止めよう・・・?
明日から、頑張ろうよ、ね?そうだよ。明日から頑張ろう・・・?

だから、更新は控えます。
って言った矢先、多分明日更新します(おいこらぁ)
この3連休は、ストレスを発散するかのごとくSAIを起動しまくりですwww


―――――――――――

そして、バレンタインなので、やっぱり学園スレイヤーズです;
いいんだ。あたしは、楽しかった・・・!涙
需要がなくとも、あたしは楽しかったから、いいんだっ!ww

ちなみにここ数カ月間ちまちまちまちまと、
書いていた今回の小話は、去年のバレンタイン小話の対だったりします。
ゼル視点の小話です。
お暇なときに、つつきより、なまこの妄想にお付き合いください^^









―――――――――――――――――――――――――――

 

「ゼル―!!おっはよーさーん!!」
「おう。朝練いくぞ。」
「おーう!」
「なんだ。今日はヤケに元気じゃないか。」
「ん~?だって今日は、ただでお菓子もらえる日なんだぜ~?」
「は?」

「ハッピーバレンタイーン♪」

 

【塔の上のバレンタイン】

 

突き抜けるような青空と、
頬を撫でる痛いほど冷たい空気が気を引き締める。
朝練をするには丁度良い、そんな空気だ。
今日もいつもと同じ朝。
しかし世間では、ちょっとしたイベントらしい。

「楽しみだなー。どんくらいもらえるんだろー。」

隣を歩く薄着の美少年は、
聞く男が聞けば一瞬で敵に回るようなことを、
嬉しそうに口にしながら鼻歌を歌う。
まぁ、この大食漢にはこれ以上もないイベントなんだろう。
相変わらず、おめでたい良いヤツ―――
そう思って出た溜息は、綺麗に真っ白だった。

「なんだよー。ゼルは楽しみじゃないのか~?」
「おれには関係ないだろう。」
「・・・んなわけ、ないだろ~!!!???」

珍しく、ガウリイの荒げた声を聞いた。
そのいきおいで、すごい力で前から肩を掴まれた。
すっごい痛い。

「オレ、お前さんが甘いもの苦手だって知ってるぞ!?」
「・・・あぁ、そうだろ?」
「だから、お前さんの分も期待してん、のっ!!!」
「おい」
「ま、それだけじゃないんだけど。」

急に、いつもの柔らかな声に戻ったと思ったら、
肩の痛みもひいていた。

「オレだって、バレンタインデーの意味くらい知ってるよ。
 女の子が、想いと勇気を絞ったチョコレートを、
 好きな奴に渡す、大切な日なんだ。
 そんなチョコレートはとびきり甘くて、ちょっと苦いんだって。」

そう言ってふんわりと笑った。
―――こいつが、病的にモテるわけは、ここにある。

「だから、今日もらうチョコレートは、とびきりうまいんだぜ?」
「で?おれにもそれを期待しているようだが、
 仮におれ用に込められた気持ちも、お前が食ってくれるってわけか。」
「そうだよ。」
「おいおい」
「だって、捨てるよか断然いいだろ?
 確かに、お前さんが食べてあげるのが一番なんだけどな。
 ここは被害の一致、ってことでさ。」
「利害の一致、だ。被害が一致してどうする。どんな悲劇だ。」
「それに、オレにもお前さんにも、たくさんの想いに応えられない、
 理由があるじゃないか。」

規則的に出ていた白い息が、列を乱した。

「オレは、リナのが欲しい。」

はっきりと、
口から出る白い息のように曇らせることなく、
頭上に聳える真っ青な空のように、はっきりとそう言った。
正直、しびれた。

「リナ、くれるかなぁ・・・」
「気にするまでもないだろ?」
「そう、かなぁ・・・?」
「なんだ、らしくもない。」
「本命に対して気弱なのは、当然だろ?」

ざっくり、きた。
瞬時におれの脳裏を駆け巡る、あの黒髪蒼眼の笑顔。
瞬時に流れる少々重い沈黙。
しかし、それは本当に一瞬で、
ガウリイがひょいと、おれの顔を覗き込んだ。

「・・・アメリアからのチョコ、欲しい、よな?」
「・・・・・・お前は今、おれに愚問を投げかけた。」


そんな会話をしていたら、あっという間に学園に辿り着いた。

 

「おはようございます!!」
「おはようございます、主将、副主将!」

学園の道場につくと、既に何人かの後輩は準備万端で。
おれらはいつも通り、先に来た後輩から部室の鍵を預かり、
備え付けの部室のロッカーを、
開けた。

 

―――ボオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!

 


「なんだ!?なんだ!!?何の音だっ!!??」
「何か爆発したのか!?火災報知機・・・!!」
「誰だよそんな馬鹿やってんの!!こんなこと副主将に知れたら・・・」
「いや・・・原因は副主将にある!!!」
「「「はっ!!?」」」

――――・・・誰か、この状況を説明してくれないか。

「ほーら言ったろ?オレはお前さんの分もちゃんと考慮・・・」
「―――今はそんなこと・・・言ってる場合かああぁっ!!!!

何で・・・
昨日最後に部室の鍵を閉めた奴は誰だ・・・?
今日一番最初に部室を開けた奴は誰だ・・・?
何にしても、ありえないだろう。
いや、ありえてたまるかこんな現実。

チョコレートで、ロッカーが爆発するなんて―――!!!

正確に言うと、ロッカーに詰め込みに詰め込まれたチョコレートが、
その重力を解放したせいで、一気に飛び出したのだ。

確かに、確かに荷物一つしか入らない程の小さなロッカーだが、
爆発するほど・・・どうやって入れたんだ・・・?

ちなみに、その現象がおれとガウリイのロッカーで起こった。
二重の爆音、響かないわけが無い。
そのせいで完全に壊れたおれのロッカーの扉と、
飛び出したチョコレートを顔面で受け止めたおれのこの痛みを、
一体どうしてくれよう――――

「・・・だよな。正直、オレもこの量は予想外・・・」
「意味がわからん・・・これが、これが想いなのか・・・?
 どんな想いだ・・・?最早憎しみとしか思えん。」
「おいおい落ち着けよゼル・・・!」
「・・・当初の予定通り、全部お前にくれてやるぞガウリイ!!!
「落ち着いてゼル!!!!顔が、怖いよ!!!」

その日の朝練は新たな年始まって以来、大変厳しいものだったと、
後に運動部内で「剣道部チョコレート爆弾事件」として、
語り継がれることとなった―――



こんな不機嫌な朝に限って日直。
苛立ちを隠さぬまま、着崩れた制服にも頓着せず、
ガウリイを置いて部室を出た。

おれは教室に戻る道すがら、様々な教室から、昇降口から、
女の手元の甘ったるい匂いと、
刺さるような視線を潜り抜けた。

さすがに、この隠しもしない不機嫌オーラをまとったおれに、
近づける女は誰一人としていないようだ。

「あーゼルだー。」

前言撤回―――1人いた。

「・・・リナ」
「あんた、朝練もう終わったの?」

そう言うリナはまだ白い道着を着て、竹刀を肩に担いだまま。
女子剣道部もこの頃朝練をはじめたようだ。

「生憎日直でな、先に出てきた。」
「あー・・・、っそう。」

リナの癖に、珍しく歯切れが悪い。
気まずさを隠しもせずに、おれから目をそらす。

「うん、別に、あたし悪くないし。」
「何のことだ?」
「うんにゃ。なーんでもなーい。」
「は?・・・ん?お前、何食ってんだ?」
「・・・・・・マカダミアン、チョコレート。」

 


――――最悪だ。

 

こんなに授業がしんどかった日が、
他にあったろうか・・・?

授業中も、移動教室中も、休み時間も、体育の時間も、
絶えず女の視線に串刺しにされ、
次々に現れる勇気を携えた、女戦士達。
お陰で、昼休みが来る前に、おれのヒットポイントは瀕死状態だった。

基本、全て突っぱねてやったんだが、
いつの間にか机の中や教室のロッカーに置いてあったものは、やむなく回収し、
目の前で泣かれたものや、しつこいものも、やむなく回収した。

とゆーか、何故団体でやってくるんだ、団体で。
1対1ならまだしも、1対複数とか、反則だろう。
戦いなんだろう?正々堂々と1人で出来やがれ。

どうして女は群れると無敵になるんだ?

そこでやってきた昼休み。
餌食になるのはもう予想済み。

「ゼルー、何処行くんだ?飯は?」
「悪いがガウリイ・・・。おれは逃げさせてもらう・・・。」
「あー、そうかー。」
「なぁ・・・なんでお前は平気なんだ?」
「オレ?だって来るもの拒まないしー。」
「・・・そうだった。」
「で?何処行くんだ?」
「・・・とりあえず図書館、か?」
「ん、わかった。と、しょかん、と。」
「何故手に書く。」
「忘れないように。」
「・・・その情報をどうする?」
「もしチョコ渡しに来たら、困るだろ?」
~~~おれはそれから逃げるんだっ・・・!!
「おー、そうだなー。」
「あんのなあぁぁぁ~~~。いいか!?
 知らん女に教えるんじゃないぞ!!?」
「おう!それは大丈夫だ!」

信用がおけん。
だが、おれは一刻も早くここから逃げることを優先させた。

図書館なら、無事かと思ったら、
何故か既に待ち伏せされていた複数人から逃げる羽目になった。
一体どういうことだ。
逃げる途中、図書館に悠々と入って行くゼロスを横目に見てしまい、
更に最悪な精神で足を速めた。


しょうがないから、屋上まで来た。
今の時期は寒いから滅多に来ないのだが、やむを得ん。

屋上手前の踊り場のところに差し掛かると、
性能のいいおれの耳に声が届いた。

「・・・これ、受け取ってください。」
「あぁ。どうもありがとう。」

女の照れ笑い、じゃぁ、と言ってその女は、
おれを一瞬だけ見て驚いた顔をし、更に顔を赤くして駆け抜けていった。
その後ろから、のぞいた男の顔に、
眉間にしわを寄せずには、いられなかった・・・

「あ。ゼルガディス君?」

 

あいつと、アメリアと同じ名前を持つ、学園生徒で唯一の男。
名は確か――――アルフレッド。

「こんにちは。」
「・・・どうも。」

人の良さそうな笑顔。さわやかすぎる声。
それは何故か、おれに対して、いやに当たりが良い。

「屋上?立ち入り禁止だけど?」
「あぁ・・・開けるから、いい。」
「それ、僕が副会長だって知ってて言ってる?」

苦笑をするその笑顔にもソツが無い。
ふと、以前リナが言っていたことを思い出した――

『とりあえず、あんたが注意しとかなきゃなんないのは、あいつ。
 スレイヤーズ学園の副会長であり、セイルーン財閥のおぼっちゃま。
 人当たりも良く、何でもソツなくこなし、
 顔もよければあんたに足りない愛想がある。』
『・・・』
『おまけに、アメリアの従兄。』
『・・・だろうな。』
『一番近い所で、あの娘のことを見てきて、
 傍から見ればアメリアのお兄様。
 でも、本人はどう思ってるやら?』


今のところ。
おれの目の上の特大たんこぶだ―――


「聞いたよ?剣道部部室のロッカー。」
「ぐっ・・・」
「思わず笑っちゃったよ。しかも2つも壊れるなんて。
 さすが、学園の色男ツートップ、ってところかな?」
「・・・そりゃどーも。」
「修理費、早急に工面するからさ、
 一応請求書、生徒会宛に出しといてくれないかな?」
「・・・了解。」

あいつは階段の上から、おれは階段の下から。
一見、困った運動部員と苦労人生徒会役員の会話に聞こえるが、
この男―――隙が、全くない。
しばらく、あいつの笑顔に見下ろされていると、
ゆっくり、降りてきた。
咄嗟に、おれも階段を、のぼる。
すれ違う、その時に、

「君は、もうもらった?」

――――あいつから、仕掛けてきた。

「何をだ?」
「愚問、じゃないの?」
「―――まぁ、ざっと、ロッカーをぶち壊す程度に。」
「ふふっ・・・面白い人だね。」

そのまま、通り過ぎてやろうと思った。
だが、あいつはおれを放さなかった。

「僕は、まだだよ。」
「はっ。必ずもらえるような口ぶりだな。」
「おや?誰からのこと、言ってる?」

――――しまった。

「その様子だと、君もまだみたいだね。」
「・・・っ」
「いくら数だけもらっても、肝心な1個がないとねぇ・・・。」

そう言いながらこいつは、さっきもらったはずの可愛い包み紙を、
たった2本の指で摘まんで言った。

「そう思わないかい?」

そう言った声は、さっきとなんら変わらない。
だが、それに入っている感情は、明らかに――――挑発。
この一言ではっきりした。

あいつにとってもおれは、一番煩わしいたんこぶである、と。
――――上等だ。


「さぁな。」

それだけをあいつに叩きつけて、おれらは完全にすれ違った。
あいつに、おれの心の揺らぎを悟られてたまるか。
あいつだけに、優位な立場に立たせたままでたまるか。

こいつにだけはあいつを取られたくない。

自分勝手で、傲慢で、幼稚な理想だが、
たった今、そう強く誓い、そして感じた。

バレンタインデーは、
男の戦いでもあったんだな、と。

 

そう思った、矢先だった。


瞬く間に放課後になり、待ちに待った部活の時間。
こんなに部活が待ち遠しいと思った日は、他に無い。
何故なら、部活中は女の攻撃は無い、安全地帯となるから。

「いやー!!部活は平和だなー!!」
「・・・全くだ。」
「で?こんな安全地帯から抜け出して何処行くの?」
「給水。」

道場から、屋外渡り廊下をぬけて、
いつもの水道で給水をすませ、顔をあげた瞬間だった。

「いつもお世話になってます!帰ってから渡しに行こうと思ってたんだけど、
 今会えたから、どうぞです!」
「あぁ。毎年ありがとう、アメリア。」

――――――――――今気付いた、

今日、この瞬間まで、おれはアメリアの姿を全く見ていなかったのだ。
こんなにもイライラしていたのは、女の攻撃云々の前に、
あいつの顔を見ていなかったからなんだと、今更思い知った。

そんな無意識にでも、想い焦がれていた彼女の今日一番に見た姿が、
一番渡してほしくない相手に、想いを捧げている瞬間だった―――――


あぁ、やっぱり笑った顔が、一番可愛い。


心の中はガウリイより素直だ。
それを言葉にするのを躊躇っているのは、
おれの中の、大きくて硬い臆病という名の防波堤だった。
今、心の中で瞬時に想った事を唱えても、
その一番の顔を向けているのは、おれにではなく、あいつ。
楽しそうに、
慈しむように、
客観的にみると、実にさわやかでお似合いな2人の間に、
それこそ隙は見当たらなかった。
いや、隙を与えないのは、やはりあの男の技なんだろうか。

 

そう思った瞬間、目が合ってしまった――――あの男と。

 

やばい、と思った。
しかし、何がやばいのかわからない。
それでも、部活でかいた汗が、瞬時に冷や汗に変わり、全身に蔓延る。

「あぁ・・・アメリア!」

まだ何も考えられないのに、
奴はあろうことかアメリアを呼びとめた。
混乱したおれの頭は、一体奴が何を考えているのか、
探るすべを失った。

「どうしたの?アル。」
「君は・・・どうなの?」
「なにが?」
「君にとって、このチョコは・・・季節の挨拶?」

――――――こいつっ!!!

瞬時に脳天があっつくなった。
おれがここにいるとわかって、そういうことを聞くのか。
要は、おれに見せつけるためか?
特別な想いをこめたものだと・・・
アメリアの特別が、ゼルガディスではないことを、
アメリアの口から言わせる、つもりか―――!?


―――――――――――――――聞きたくない!!

 


「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「どうしたゼル!?」
「・・・ぁ?」
「そんな息切らして帰ってきて、
 水飲んだ意味ないじゃないか・・・。」

気付いたら、
おれは息を切らして汗も流したまま、
ガウリイの前で膝を折っていた。

「本当に・・・どうしたんだよ?」
「・・・て、・・きた。」
「え?」
「・・・・逃げて、きたんだ。」


―――――なっさけな・・・


その後の部活は、
さっきの光景がベットリ貼りついた脳味噌抱えたまま、
もちろんガウリイに瞬殺され、
今まで負けたことのなかった同級生一人と、後輩一人に、
全敗を記した。
そこでさすがにおれの不調を悟った全部員に、
慌てて体調を心配されるまで、おれの意識は混沌に還っていた。


いつもより、少しだけ早めに部室から吐き出された。
いつもなら鍵閉めも兼ね、一番最後に出るのだが、
体調が悪いなら、早めに帰って休んでくれ、と全部員から懇願され、
已む無く後をガウリイに任せ(とても心配)
逸早く、校門近くまで差し掛かったわけだ。

―――あいつは、あいつと一緒なのだろうか?

やっぱり、脳に燻ぶる思いはそればかり。
ふと、今朝ガウリイが困ったように紡いだ言葉を思い出す。

『本命に対して気弱なのは、当然だろ?』


あぁ、違いない。


だがもう、おれは気弱を通り越して、敗北だがな―――


「・・・あのっ、ゼルガディス、先輩!!」

ふいに呼び止められた。
そこにいたのは見たこともない女。
ネクタイの色から見て、1つ後輩の。
肩より少し長い黒髪がゆるくまかれていた。
目に留まったのはそれだけ。

黒い肩くらいまでの髪。

それだけでまたあいつを思い出す。
末期だ。

「・・・ずっと前から、憧れてました・・・大好きです。」

赤い箱を差し出す手が震え、頭はおもいっきり低姿勢で、
しばらくすると様子を窺うように、
おずおずと顔をあげた、その顔に、

アメリアを見た。


これが、あいつだったら。


甘い罠にハマったかのように、自然と手があがった。
そしてその想いに触れようとする手前で、意識を戻した。
違う、今おれがしようとしていることは、
人間としておかしい。

「・・・悪い。おれには受け取れん。」
「・・・」

意識を戻したおれは、咄嗟に今日既に数十回と口にした言葉を紡ぐ。
目の前の女は、しばらく箱を突き出したままで止まっていたが、
やがて、ゆっくりと体制を戻した。

「です、よね。ゼルガディス先輩、
 直接渡しに来た子からは、誰からも受け取ってないらしいって聞いて。」
「・・・あぁ。」
「でも、泣きわめく子とか、どうしてもー!とか、
 どうしようもない子のは、しょうがなく受け取ってる、って。」
「・・・何故知ってるんだ。」
「えー!?ゼルガディス先輩の動向は、
 学校中の先輩ファンの女子の中で、情報が飛び交ってるんですよ??
 知らなかったんですか!??」
「・・・は?」
「その様子じゃ知らなかったんですねぇ・・・
 やだ、私、余計なこと言っちゃった。」

そう言いながら、ぺろっと舌を出すしぐさに、
またあいつを重ねてしまい、慌てて頭を掻き毟る。

「先輩?先輩って、ちゃんと本命いるんでしょ?」
なっ!!!!!

ちょっと待て。
まだ直球攻撃は全くよけられない。

「ふふふふふ・・・先輩のそういうところが人気なんだって、
 わかってやってるんですか?」
「何を言ってるのかわからん!!」
「ほらまたー。」

おれは今、年下に転がされている気がしてならん。

「私達、先輩のファンだったらわかるんですよ?
 ファンだから、好きな人のこと知りたい、って思うでしょ?
 憧れて、ずっと見てたら、自然とわかるんです。
 あのコにしか向けていない、とっておきの顔・・・。」
「・・・よく、わからん。」
「え?」
「・・・仮に、仮に、おれに、ほ・・・本命がいるとして、だ。
 そう思っているのに、なんでお前らはそれを渡そうとするんだ?」

泣きわめいてでも、
しつこくすがってでも、
想いが、届かないとわかっているのに―――

「だって、しょうがないじゃないですか。
 それでも先輩のことが好きなんですよ?」
「・・・」
「想いが届けば、まぁそうだったら一番いいんですけど、
 要は先輩に、私の気持ちを知っててもらいたいんです。
 とりあえずそこから、ってことで。
 まず、先輩に私の存在を知ってもらってから、
 想いを届けるまでの段階に入るんです。
 これが、私のやり方。」

そういって、彼女はおれが突っぱねたチョコの入った箱を開け、
自分でその想いを飲み込んだ。

「他の皆はどうかわかんないけど、
 私は先輩の恋を応援なんかしませんよ?
 いつか私が、先輩にこのチョコレート食べてもらうんですから。」
「・・・!!!」

この潔く、不敵に笑う女戦士に、
どうやらおれは敬意を払わずにはいられないようだ。

「―――名前は?」
「え?」
「お前の、名前はなんだと聞いている。」

その一言で、彼女は大層嬉しそうに、表情を温かな物に変えた。
と同時に、おれの言葉一つでこんなにも人の顔を変えることが出来る事実に、
少しだけゾッとした。

「もしかして私、先輩の心に一歩前進、ですか?」
「勘違いするな。お前が思っているような理由じゃない。」
「えー?ケチィー。」
「やかましい。」

彼女には悪いが、
おれは、戦う気力をいただいたわけだ。

「おれの想いは、変わらん。」

せいぜい機嫌取りや柔らかい嘘なんぞ付かない。
正々堂々と向かってきた女戦士に釣り合うよう、
おれも一人の戦う男として、本音でぶつかろうじゃないか。

「・・・ミランダです。」
「ん?」
「私は、ミランダです。先輩。
 私、諦めませんからね?」

そういってミランダは、笑って駆け出していった。

 

部屋に帰り、ぐったりとベットに倒れこむ。
さて・・・これからどうしたものかと、
思案しながら携帯電話を開いて、飛び起きた。

着信1件 アメリア

咄嗟に、そのままリダイヤルを押した。
―――しまった、何を話す・・・!!??
そう考えた頃には、既に時は過ぎていた。

『・・・もしもし?』
「アメリアか。」

当たり前だ。
だが不覚にも、今日ははじめて自分に向けられた声に、
高揚感が隠しきれない。

『・・・・・・・ゼルガディス、さん?』
「当り前だろ、ってお前誰だかわからず出たのか?」
『いえ・・・あの、その・・・』

今朝のリナといい、今のアメリアといい、
らしくもなく歯切れが悪い。
具合でも悪いのだろうか・・・?
何か、悲しいことでもあったのだろうか・・・?

「まぁいい・・・どうした?」
『・・・は?』

挫けそうだ――――

「んん?お前の着信履歴が残っていたから掛け直したんだが・・・」
『あ・・・えーっと・・・間違いです。』
「間違い?」
『はい、そうです・・・リナにかけようとして、間違えたんです・・・。』

おい・・・本気で挫けるぞ・・・?
何故お前はそんなにもわかりやすい嘘をつくんだ・・・?
ここで何故なのか、理由をどうしても聞き出したい。
心はそれで支配されているが、
たった一握り残った理性が、それを止めている。
―――この理性がなければ、おれは確実にこいつを、傷つける。

「・・・そうか。」

だからそれしか言えなかった。

『はい、ごめんなさい。わざわざ掛け直してくれて・・・』
「いや・・・別に・・・」

気のきいたことも言えなくて、
何故いつもの花のような元気が無いのかも聞けなくて、
―――おれは、それでも、おれはお前が、

『・・・あの』
「おーいゼルガディスー!」

~~~ガウリイイイイイ―――――!!!!

「おーゼルー!いるなら返事しろよー。」
「・・・おい」
「あ?電話中か?珍しい。誰ー?アメリア?」

何故わかる。
というか、電話中だとわかっているのに、
なんでずかずか部屋に入ってくるんだ。
そしてその両手に持っているものは―――

「チョコ、結局もらえなかったんだよなー、お前さん。
 しかも今日断り切れなかったお前さんのチョコは全部オレとリナの腹んな――」
「悪いアメリア、切るぞ。」

咄嗟だった。
この話を最後まで聞かれるよりは幾分もましだと思った。
―――だが、もう・・・・・・終わった

「ん・・・?ゼル~?」
「・・・ガウリイィィィィィ・・・」
「え・・・いやだ、ゼル、また怖いゾ・・・?」
「なんでお前は・・・いや、お前に当たってもしょうがない・・・」
「・・・いや、オレに当てて済むなら、いいゾ?」

頼むから、そんな澄んだ目でおれを見るなよ・・・

「・・・アメリア、さっきの電話で、元気なかった・・・」
「ふむ・・・」
「明らかにわかりやすい嘘までついて・・・
 なぁ、そういう時、何て言えばよかったんだ?」
「ふーむ・・・いいんだよ、言いたくないんだから、
 無理に聞かなくていいんじゃないか?」
「うん・・・聞かなかった。」
「えらいじゃないか!前のゼルだったら、問い詰めて問い詰めて、
 アメリアが泣くまで気付かなかっただろう?」
「・・・・うぅ・・・」

ガウリイはベットに座っていたおれの隣に座り、
袋の中から適当なチョコを取り出してポリポリと音をたてはじめた。
それにしても、凄まじい量・・・

「アメリアだったらさ、大丈夫だろ?」
「・・・どこからその根拠が。」
「だってアメリアだぜ?
 悲しいのを、ずっと悲しいままにする子じゃないし、
 義理がたい正義娘が、『正義の仲良し4人組』のお前に、
 チョコをあげないことはないさ。」
「・・・まぁ、そうだが。」
「今日はまだ時間がある。気長に待てよ。」

そう言いながら快活に笑うガウリイに、
1つ気になっていたことを、おれは訊ねた。

「お前・・・リナからもらえたの?」
「え!!?・・・あー・・・その・・・」
「・・・おれに気を使うな。もらったんだろ?」
「・・・・・・・うん。」

そんなまた嬉しそうな顔して・・・

「よかったナ。」
「ハハッ・・・全く心こもってねー。」
「おれはお前ほど心が広くない。」
「何言ってんだかー!ま、大丈夫だって!
 リナだって、今頃・・・」
「あ?リナがどうした?」
「んー、なんか今日ゼルに悪いことしたらしいぜ?」
「はあ?」
「うん。だから、一応世話は焼くんだと。」
「何の事だか・・・」
「さーな?でも、ちゃんと悪いって思ったら律義に貸を返そうとするんだぜ?
 そういうとこ可愛いよなー。」
「おれは今お前の惚気に付き合えるほど精神的余裕が無い。」

他愛のない話は、
そこから数分は続いた。

 

存分にくだらない話をし、
袋の中のチョコレートがほぼ姿をなくした時、
ガウリイは自分の部屋へ戻って行った。
時刻はとっくに、学園寮の門限を過ぎている。
まぁ、だからと言って、外に出られないわけではないが、
外に出る理由もない。
この時期のこの時間は特に寒くて、
交感神経が仕事を放棄している今の状態では、
どうにも動くことさえままならない。
だが、

シュンッ!カシャン!!

外のバルコニーに、何か金属音が響いたことを、
おれの性能のいい耳は瞬時に捕まえた。
ふむ・・・外に何かを置いた覚えはないし・・・
一体何事かと、無意識に、おれは窓を開け、

「・・・・はっ!!?なっ!!?あぁっ!!?」

だから、今日の俺は直球攻撃に本当に弱い。
夢か幻か?
だが、まぎれもなく現実で、おれの網膜に張り付くその光景は、

1本のロープにぶら下がる、愛しいアメリアの姿―――

「あっ!ゼルガディスさん。」
「アメリア!!!??おまっ・・・何やって・・・!!」
「ちょっと待っててください、今行きますから!」
「~~そうじゃないだろ!!」

とにかく夢でも幻でもどうでもいい。
この破天荒なお姫様を、1本の危険から早く救い出す、
それだけを頭に、おれは猛スピードでロープを手繰り寄せた。
人が1人括りついてるはずなのに、
なんでこんなに軽いんだ―――!?

「・・・ふう!ありがとうございます。」
「~~~!!!!???」

どこまでも快活で、突拍子もない、
甘い甘い笑顔を向けられては、
途端に怒鳴ろうとしていたおれの言葉に栓を閉めずにはいられない。
・・・ずるい、だろう。
言葉にならなかった言葉を吐息に変え、おれはうなだれた。

「・・・お前・・・なんで来たんだ・・・?」

そういえば、さっきまで悲しそうだった、ってことを思い出した。
アメリアがいきなり、先ほどまでまとっていた悲しみを脱ぎ棄てて、
いつも通りの花の香りで、おれの目の前にいる理由がわからなかった。

悲しいを、悲しいままにする女じゃない―――

そうだ、わかっている。
だからおれはこんなにもお前が―――

ぐっと、ひるんだ顔をしたのは一瞬だけ。
その顔を少し引き締めたアメリアは、
これまた勢いで、一つだけ持っていたいつもの鞄に手を突っ込んだ。
派手にがさがさと音を立て、
何かものを取り出したと同時に、
アメリアはうつむき、代わりに物体がおれの目の前に突き出された。

「・・・・・・受け取ってください。」

―――これは一体、なんだ?
細い声で、包みを持っている両手はガタガタ震え、
少しだけのぞく肌色は、いつもよりほんのり桃色。
さっき、彼女に―――ミランダに、
アメリアを重ねた時の、そのアメリアの姿が、
今おれの目の前に広がっていた。

――――やっぱり、夢か幻・・・三途の川?

「おれに、か?」
「はぁ!?」

あ。やっぱり、顔は真っ赤だ。
しかもうっすら涙を浮かべた真っ赤な顔。
笑顔が一番可愛いが、この顔もぐっとくる―――
まだ夢物語、死に際だと思っているおれは、
自分の声とは思えない、気色悪い声で、

「おれに・・・か?」

もう一度、確かめずにはいられんかった。
すると、アメリアの表情は徐々に落ち着いていき、
だが困惑した顔は崩さず、小さく、小さくうなずいてくれた。

気付けば恐ろしい距離にいて、
無意識に引き寄せられたことに気付いた。
―――どうにかしてる。
待ちに待った、無事にアメリアから、
何処までも渇望した物を、受けとることが出来た。
目だけで、包みの開放を願い、それにもアメリアはうなづいてくれた。

―――中身は、ビターチョコレート

甘いものが苦手であると、知っているのはあいつらだけで。
それを知った上で選んでくれたこのチョコレート。
数も少なめ、大きさも小さめ。
――――だけど全て、ハートの形
これは、勘違いしても、いいんだろうか・・・?

「わざわざ、これ届けるために、ロープでよじ登ってきたのかお前は。」
「そ・・・そうですよ!!い、いけませんか!!?」

嬉しすぎて、声にもそれがにじみ出ていたが、
アメリアはむきになって返してきた。
だけど、我慢できなくて、アメリアの了承待たずに、チョコを口に放り込んだ。
ダメだ、これはもう、おれのものだ―――
誰に言うでもなく、子供じみた叫びを口内で繰り返す。

さすがビターチョコ。
ほとんど甘くない。これならいける。
というか、アメリアからもらったものなら、
恐らく砂糖水でも飲み干すだろうが。

いつの間にか、おれは全て平らげていた。
――――我ながら、がっついてらっしゃる・・・

「ごっそーさん。」

そう言ったアメリアとの距離は、やはり近くて。
もっと近づきたくて顔を覗きこんだら、
アメリアに目をそらされた。
あ。しまったおれ、調子に乗った―――

「そ・・・そうですか!!じ・・じゃぁ、私は、これで!!」
「待て。」

慌てて帰ろうとする彼女に、待ったをかける。
愛しさ、嬉しさ、満足感、色々なものが溢れてはいるが、
まず、言わなければならないことがある。

「お前に言いたいことが3つある。」
「~~~・・・・!!」
「まず1つ目。寮の門限飛び越えてきやがって。しかも、なんだこの登場の仕方は。
 ロープ1本で、しかも制服のままときたもんだ。無茶をするのも大概にしろ。
 誠心誠意想いをこめまくって、まず俺に謝れ。」
「ひえ~~~ん!!・・・ご・・・ごめんなさい・・・。」

これだけはやっぱり怒っておきたかった。
いくら豪腕娘であると、周知であろうと、
こんな寒空の下、防寒もろくにしていない格好で、
頼むから、無茶をしてほしくない気持ちで怒鳴った。

それから、

「2つ目。」

ここからはおれの、気持ちだ。

「・・・わざわざ、来てくれたことには感謝する。」

やはり、ガウリイやミランダのように、
正直に気持ちを言葉にするのはとても難しい。
それを、本人の前で堂々と言えたミランダは、本当に大したものだ。
おれなんか、アメリアを見ることさえできない。

「・・・あ・・えーっと・・・はい。」

そういったアメリアの顔が、
もう・・・やばくて、
思わずおれは後ろを向いた。
勘弁してくれ勘弁してくれ。

「・・・3つ目。」

後ろを向いたまま、
いや、おれは今これを言っていいのだろうか・・・?
だが、もう、後には引けるか・・いや、ひくもんか―――
首だけまわしてアメリアをみる。

「これからは、そーゆー風に扱っていいんだな?」

正義の仲良し4人組ではなく、
愛しいおれのお姫様として―――
お前に振り向いてもらえるように、
おれは今日から、騎士になろう

「いいんだな?」

またいつの間にか吸い寄せられるように、姫の傍にいた。
許しを請うように―――
これまでのおれとは比べ物にならないくらい、
真剣に、真摯に、アメリアの目を見た。

「・・・・・はい。」

姫の許しを得た騎士は、小さくガッツポーズをした。


「えええええ!!??」
「おい、声がデカイ!!」
「~~~でもでも、やっぱり悪いですよぉ!」
「やかましい!黙ってついてこい!」

家まで送ると言ったら駄々をこねられた。
―――おれはまだお前といたいんだ。
なんて、ちゃんと言えたらこいつは黙るだろうか・・・?

「ゼルガディスさん・・・自転車持ってたんですか?」
「いや、これはガウリイのだ。」
「うぇっ!?」
「ガウリイは他の奴と違って鍵つけっぱなしだからな。
 チャリ持ってない寮生の間じゃ、急用で必要になった場合、
 ガウリイのを使うのが暗黙の了解になってる。」
「・・・・・悪ですぅ。」
「やかましい。当の本人は気にしないどころか、気付いてもいない。」
「うぅぅ・・・。」
「ほら、乗れ。」
「え!!!???ふたっ・・・2人乗り・・・!!?」
「生憎チャリは1つだ。文句があるならお前は走るか?」
「えええ~!!??ううぅぅ・・・でも2人乗りは悪ですし・・・。」
「この荷台は何のためにあると思う?」
「え?荷物を乗っけるためですよ?」
「そうだろう?荷物。」
「・・・ってぇ!!わたしを指さすとはなんですかあぁ!!!」
「ほら騒ぐな。いいから乗れ。」
「~~~~~!!!」

ガションッ

「あの・・・もう門限すぎてますよね?」
「あぁ。」
「どうやって、門開けるんですか?」
「お前、屋上の解錠をしたおれにそういうこという?」
「もー!!また、勝手に鍵あけるんですかぁ!?悪です、よっ!?」
「というお前はどうやって入ってきたんだ?」
「え?登ってきたにきまってるじゃないですか☆」
「~~~~っ・・・。」
「なんで顔おさえるんです?」
「・・・もういいっ、乗れ。くそっ!」

おてんばで豪腕で、破天荒で無意識に派手好きで、
正義という名の自由をこよなく愛し、
誰にでも礼儀正しく、自分の考えは一直線に曲げなくて、
普段の行いはどうしようもなく奇怪で、
存在だけで光熱費がかかりそうなのに。

後ろに温かな花を乗せながら、
走行中、何を話すでもないが、
温かな気持ちを乗せて、
おれはたった1つを胸に灯す。

―――どうしても、おれはアメリアが欲しい。


いつか、きちんと言いたい。
その時、ちゃんと受け止めてもらえるように、
アメリアを失わずに済むように、
努力しよう。

おれが、努力とか。

そう思って1人で笑った。

 


「ほら。ついたぞ。」

相変わらずでかいアメリアの家まで、
無事に送り届け、自転車から降りるアメリアを見て、
遠回りでもしてやればよかったと後悔した。

「ありがとうございました。」
「こちらこそな。」

軽く挨拶を交わし、これ以上名残惜しくなる前に、
自転車に乗り、向きを変えた。

「明日から、覚悟しろよ。」

宣戦布告。
おれは、お前を手に入れようとしているんだぞ?
もう逃げられないから、逃げたいなら精々逃げるがいい。
絶対、絶対ふりむかせてやるからな。

そのまま軽く手を振るアメリアを横目に、
おれは力強くペダルを回した。

 

―――絶対、ふりむかせてやる?

さっき自分で思ったことを反響してみて、思わず声を漏らして笑った。
なんだその前向き宣言。らしくない。
だが、それも悪くない。

携帯のバイブレーションが突然現実を思い出させた。

「あ?」
『あ、ゼル。オレオレ~。』
「なんだ?」
『くくくくっ・・・なんだじゃないだろう?
 あんなに派手に音だしておいて!』
「なっ!!?」
『お部屋で、二人っきりでー、何したんでちゅかー?』
「ばっ!!違うっ!!!そういうんじゃ・・・」
『わかってるよ。今外?』
「・・・あぁ。送ってきたところだ。」
『寮のおばちゃん達は早めに帰ってもらったから、
 コソコソしないで帰って来れるぞー。』
「・・・!・・おぉ・・・」
『感謝しろよー?
 オレ今おばちゃん達が残した皿洗いしてるんだからなー?』
「・・・帰ったらおれも手伝うから、とっとけよ。」
『ははっ!いーよ!もう終わるから。』
「なぁガウリイ・・・」
『んん?』
「お前は・・・どうしてそこまでしてくれるんだ?」
はあーあ??
「・・・ばっ!デカイ声、耳元で・・・!!」
『ゼルー。さすがに傷つくぞ~?』
「・・・?」
『し・ん・ゆ・う、だからでしょっ!??』
「――――っ!!!」
『あーもう!!オレ一回洗ったのもっ回汚そうかなー?』
「やめやめっ・・・止めろっ!!悪かったから!!」
『そうだぞー!ぶー!!』
「恩にきる。」
『ん!』


マフラーで顔を半分隠しているにも関わらず、
肌に刺さる寒さは揺るがない。
だが、どうにもこの高揚感も揺るがないようだ―――

孤高の戦士、ゼルガディス=グレイワーズ。
今日は塔の上でただただ助けを待っている存在だった。
親友たちに全力で助けられ、
おれに想いを寄せる戦士に勇気をもらい、
愛しの姫君の想いに、少しだけ近づく権利を得た。

これからどうなるかわからないが。
どうしても諦められない想いだからこそ、
―――勝ち取ってやる。

改めて、新しい感情を、得た気がする。


まだ口の中に残る甘くて苦い余韻に浸り、
明日彼女の笑顔に会えることに胸を躍らせる。
さぁ、これからは、おれも待ってばかりじゃいられない。

 

――――ハッピー、バレンタイン。



 

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